今日の記事では、日本語の小説の翻訳本から外国語を学ぶことに関して、最近の読書経験を踏まえて、自分の考えを述べてみたいと思います。
僕は数週間前に、芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの小説『コンビニ人間』の日本語の原作と英訳本を読みました。
日本語と英語を読み比べみて、日本語小説の翻訳本は、実は僕が以前思っていた以上に、外国語の勉強に役立つのではないかと感じました。
実は十数年前まで、僕は小説というものは必ず原語で読むべきだという固定観念にとらわれていました。翻訳モノはとにかく文章が下手で読みにくいのが相場だという考えが、頭の中にあったのです。
実際、僕が中学生だった頃、母親からアメリカのミステリー小説の日本語訳を数冊読むように渡されたのですが、なんだか読み慣れていない文体で、最後まで無理やり読んでうんざりしたのを覚えています。
僕はそもそも読書が嫌いで、日本人作家の本さえ読まなかったのに、どことなく勿体ぶった翻訳調の文体を読まされて、本を読むのがますます嫌いになってしまいました。
大人になってから読書アレルギーは克服できたのですが、日本語でも英語でも中国語でも、僕は原語の小説しか読まないというポリシーを長い間貫いてきました。
翻訳本に関する考えが変わってきたのは、2008年に谷口ジローさんの漫画『父の暦』のフランス語版『Le journal de mon père』を読んでからです。
僕は日本語のオリジナルを読まないまま、いきなりフランス語版を読んだのですが、実に読みやすいフランス語で、ストーリーが面白いことも手伝ってか、スムーズに最後まで読み通せました。
それ以来、翻訳者の腕さえ良ければ、オリジナルでなくても充分作品を楽しめるんだ、と思うようになりました。僕の翻訳モノに対する抵抗感は徐々に薄れて、日本語・英語の小説・漫画をフランス語訳、中国語訳で読むようになったのです。
さて、冒頭で触れた『コンビニ人間』に話を戻すと、英訳本の文体は実にリズミカルで流麗な英語で、読むのがとても楽しかったです。
ここ数年、僕は英語の小説を読んでも、あまり英語の文体に新鮮味を感じなくなっていました。でも、今回読んだ『コンビニ人間』の英訳本は別で、生き生きとした色鮮やかな英語の表現に、とても刺激を受けました。
翻訳者はイギリス人なので、歯切れの良い英国風の口語表現がいくつも見つかり、僕が買った英訳本は書き込みだらけになりました。
実は、英米人の作家が直接英語で書いた原書よりも、日本語小説の英訳本の方が、文体がかえって刺激的に感じられるのには、理由があります。
それはやはり、読み手の僕が日本人だからです。
日本語小説の英訳本は、あくまでも日本語のアイデアから出発しているので、我々日本人の読者にしてみれば「これを英語で言いたかったんだ!」と唸らせる、痒い所に手が届くような英語の表現が当然ながらたくさん詰まっているのです。
こんな感じで、日本人にしてみれば気が利いた英語の表現だらけなので、英訳本の文体は日本人の読者に共鳴を引き起こすことができるのだと思います。
我々日本人が英語を話そうとする時は、数十年間使ってきた日本語の記憶を消し去ることは不可能なので、最初のうちはどうしても日本語のアイデアを英語に転換しようと試みます。
日本語小説の英訳本は、その転換の橋渡しの役割を果たしてくれます。
例えば、こんな感じです:
あいつは金に本当に意地汚いんだから、まったく!(日本語オリジナル 149ページ)
The man is really greedy when it comes to money, I swear. (英訳本 151ページ)
「金に汚い」という日本語は、英語では「be greedy when it comes to money」と言えば、英米人に通じるんだ、と分かります。
それでは、英語で直接書かれた原書と日本語小説の英訳本とでは、どちらがより英語の勉強に役立つのでしょうか?
僕はどちらでもいいと思います。
自分が考えている細やかな日本語のアイデアを的確に英語で言い表したいのなら、日本語小説の英訳本は十分に学ぶ価値があります。
でも日本語にとらわれないで、ネイティブにストレートに通じる英語だけを身に付けたいのなら、英米人の作家による原書を直接読んだ方がいいかもしれません。
どちらを学んでも英語力は確実に上達します。
個人的には、僕の頭の中では日本語の支配力があまりにも強いので、日本語を英語に変換しようとする試みが無意識に発生します。
僕の場合は、日本語の英訳本を通して徐々に英語に慣れていき、そこから英語のオリジナル小説を読むように順序を踏んだほうが、英語の上達には良さそうです。
外国語の原書と日本語からの翻訳本をうまく使って、これからも語学の勉強に励みたいと思います!
ブログランキングの応援をありがとうございます!
下のボタンをクリックしてください!